温泉水でパエリアを炊き上げている
連載|あの人に会いたい!

竹田の魅力を伝えたい!
「旅するパエリア」桑島孝彦さんが
長湯温泉〈喫泡うたかた〉で考えていること | Page 2

Posted 2025.11.28
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「旅するパエリア」で
竹田の名前を全国に届ける

そして桑島さんは次の一歩へ。それが、うたかたでも人気のパエリアを携えて、フェスやお祭り、地域のイベントへ出店する「旅するパエリア」。「日々の行動すべてに、“竹田に来てほしい”を詰め込む」という想いをかたちにした取り組みで、まさに全国を旅しながら、竹田の魅力を、パエリアの味と桑島さん自身のパフォーマンスや言葉で伝えています。

調理に使う温泉水を準備している
桑島さんの料理に欠かせない温泉水は、同級生が館長を務める〈ラムネ温泉館〉の炭酸温泉を、特別な許可を得て使用しています。
パエリアを炊いている様子
「パエリアに向くものが、こんなに身近にたくさんあるとは思ってなかった」と桑島さん。桑島さんはあえて蓋をして、ふっくらと炊き上げています。

長湯の温泉水と竹田市特産のサフランを使って炊き上げる、竹田ならではのパエリアは、いまや桑島さんの代名詞ともいえるメニューになっていますが、桑島さんの出発点はイタリア料理。リカドでも、温泉水でパスタを茹でたり、パンを捏ねたりしていましたが、スペイン料理のパエリアは専門外のメニューでした。

ただ、竹田には全国一の生産量を誇るサフランがあり、実家はお米屋。「いつかメニューにしたい」と考えていた一品でもありました。

そして、もうひとつ大きなきっかけになったのが、愛知県蒲郡市で開催されている、日本全国から魅力的な商品や料理が集まる市場と、さまざまなジャンルの音楽ライブが複数のステージで実施される野外イベント〈森、道、市場〉。

「〈森、道、市場〉に出たくて。出店したときの武器がほしくて、始めたんですよ」

容器に入ったサフラン
「これが入らなければ意味がない」と言い切る、地元竹田産の貴重なサフラン。同じ色を出す食材は数あれど「パエリアの香りは、サフランにしか出せない香りなんです」と桑島さん。

そんなことを思っていたところ、世界チャンピオンになった日本人のパエリアシェフを紹介してもらえる機会があり、ワークショップに参加。そこからさらに、オリジナリティを追求していきます。

パエリアパンが火にかけられている
「お米にも温泉に浸かってもらう」と、大分県産の米を竹田産のサフランとともに、体にいい長湯温泉の温泉水で炊き上げます。

幸運にも、パエリアには「こうでなければだめ」という決まりがありません。竹田を見渡してみると、たくさんのミネラルを含んだ硬水の炭酸温泉があり、華やかな色と香りのためには欠かせないサフランの産地であり、すぐ隣の九重には肉厚でおいしいパプリカも。

盛り付けられ完成したパエリア
地元の野菜がふんだんに盛られた「炭酸温泉で炊いたパエリア」1320円。温泉水と竹田市特産のサフランを使い、桑島さんオリジナルの方法でふっくらと炊き上げています。パプリカは〈タカヒコアグロビジネス〉の「温泉パプリカ」を使用。

炭酸温泉で炊くオリジナルのパエリアが完成すると、さっそく「旅するパエリア」として出店。大きなパエリアパンとサフラン、そして長湯の炭酸温泉を携えて、全国を旅するようになりました。「旅するパエリア」では、具材にその旅先の食材を使用。「食べものを通して、人とその土地がつながること」を大切にしているそう。

当初の目標だった〈森、道、市場〉にも数年前から連続出店。一昨年には、その年の販売数1位に輝きました。フェスへの出店も続けるなかで、「来年はフジロックを目指してるんですよ」と桑島さん。

熊谷守一の猫の絵
うたかたの店内にさりげなく飾られた熊谷守一の絵。

竹田の城下町で古民家を再生し、地元の魅力を料理のおいしさで伝え、交流の拠点となるリカドを人気店に。そして、「おもしろい竹田を知ってほしい。竹田に来て!」とパエリアを通じてコミュニケーションする「旅するパエリア」、長湯温泉うたかたでの新たな取り組み。

そしていま、竹田愛を糧に、さまざまな人を巻き込みながらクリエイトを重ねてきた桑島さんの想いが、竹田市のお隣の九重町で、壮大なもくろみとなって動き始めています。


阿蘇くじゅう国立公園を背にした桑島さん
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広大な敷地を“開墾”…!?

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