
大分の若手バンドに経験を伝えたい。
ロックバンド・go!go!vanillas
牧達弥、長谷川プリティ敬祐 | Page 3
大人になって気がついた大分の魅力
まだお酒が飲める年齢ではなかった大分時代。大人になって、気がついたナイトライフもあります。
「大人になって、知り合いのお兄ちゃんに『ここうまいぞ』っていろいろ連れていってもらったりして、わくわくしましたよね。大分市にはディープでめっちゃうまい居酒屋とか焼き鳥屋とかたくさんあって、まちとして楽しいですよね」(牧さん)

牧さんがお酒を飲めるようになって再認識したお店があります。子どもの頃から親や祖父とともに訪れていた焼き鳥屋さんです。
「〈焼とり丸ちゃん〉という焼き鳥屋さんが好きでした。じいちゃんにお小遣いもらって、テレビ見ながら焼き鳥とジュースという組み合わせで。タレがめちゃくちゃうまいんです。ビールを飲める年齢になって行ってみたら、また別世界でした。昔は1本50円だったんですけどね(現在は1本150〜200円程度)」(牧さん)

大分県のナイトライフというと別府市が盛り上がりを見せていますが、大分市にも違う魅力があって「負けていない」と語気を強める牧さん。
「おとなりの別府市は昭和っぽい雰囲気で盛り上がっていますよね。大分市はもう少し進んで、バブル以降の平成、90年代感。この哀愁がすごく好きです。大分市はビルや看板の雰囲気とか、今が一番、脂が乗ってる熟成感だと思う」(牧さん)
お湯と人から感じる大分のあたたかさ
牧さんが帰省などで大分に帰ると、必ず訪れるというのが温泉です。大人になると温泉が身に沁みるようになるから……、と思いきや、学生の頃からプリティさんや仲間たちと一緒に通っていたといいます。さすが“おんせん県”。よく訪れていたのはスーパー銭湯〈アサヒ温泉〉。

「当時の入浴料は大人300円とかで今は430円。それでも高いなと思ってしまいます」(牧さん)
「今では違うみたいですけど、当時は大分トリニータが勝つとさらに半額(笑)」(プリティさん)

東京のスーパー銭湯の感覚でいうと、430円でも安いと感じてしまいます。しかも温泉です。
「僕たちは温泉が身近過ぎて、東京に来て一番驚いたのがお風呂ですね。温泉ではなくただのお湯を沸かしているのに1000円超えるのかと(笑)。お風呂屋さんで温泉じゃないって意味わからない(笑)」(牧さん)

大分県民にとっては、温泉については感覚が違うのかもしれません。
ほかにも東京に来たからこそ感じたことがあります。それは大分の県民性です。
「大分の人は仲間意識が強くて、大分のことが人一倍好きだと思います。ほかの県の人たちよりも『お前も大分なん? イェーイ!』が強い気がする」と言うプリティさん。
牧さんは大分に帰ると、かつての自分が顔を出してくるようです。
「大分で『牧さん!』って声をかけられると、『何してるの?』とか話したりして。『APU(立命館アジア太平洋大学)に通っています』『俺の友だちも行ってたよ』みたいな、自然と会話して友だちになっちゃう。地元にいた頃の自分に戻っているんですね。そういえば先日友だちと飲んでいて、ある人を紹介されたんです。それは福岡市の高島宗一郎市長で、なんと高校の先輩だったんですよ! 同郷ということで友だちになりました(笑)」(牧さん)

これまでに何度か大分凱旋ライブを行っていますが、やはりほかの場所とは違う郷愁感があるようです。
「地元でライブをすると親戚も来てくれて、いつもは会場にいないようなばあちゃんとかが関係者としているんですよ。『昔、餅つきしていたたっちゃんがこんなに大きくなってなあ』とか言われるがのおもしろいです」(牧さん)
ただ懐かしさを感じているだけでなく、大分を盛り上げたいという気持ちは強いふたり。かつて自分たちが上の世代から影響を受けてきたように、今度は大分の若者にバトンを渡していく番です。
「大分のライブハウスで今のバンドたちを見てみたいですね。いいバンドがいたら話して対バンとかしたい。僕たちがしてきた経験を、若い子たちと一緒にワクワクできるようなかたちでつくれたらいいなと思っています」(牧さん)

新作EP『SCARY MONSTERS EP』を引っ提げて、「SCARY MONSTERS TOUR 2025-2026」ツアーが開催されます。またひとつ大きくなって、大分に凱旋してくれる日を願わずにはいられません。
「大分の人たちに『ようやっとるやん』と言ってもらえるように、ライブを続けていきたい。それでぐるっと回って、また大分で大きなことをやりたいです」(プリティさん)
「ライブでみんなとつながりたいという気持ちがこもっている作品なので、このツアーを経て成長したい。そんな僕たちを、今度は大分のみんなと大きな現場で共有したいなと思っています。期待していてください!」(牧さん)

牧 達弥(vo/g)、柳沢 進太郎(g)、長谷川プリティ敬祐(ba)、ジェットセイヤ(dr)からなる4ピース・バンド。2013年デビュー。2025年は初の海外ワンマン公演や初の欧州ライブへも出演。7月23日リリースのDigital Single『ダンデライオン』がTVアニメ『SAKAMOTO DAYS』第2クールエンディング・テーマに決定。9月24日にニューEP『SCARY MONSTERS EP』がリリースされ、10月から全国ホール&神東名アリーナツアー「SCARY MONSTERS TOUR 2025-2026」が開催される。
credit text:大草朋宏 photo:日野敦友