糀屋本店の自家製米糀
連載|おおいた食手帖

大分県佐伯市から、
「こうじ」の魅力を世界に発信!
塩こうじブームの立役者・
浅利妙峰さんを訪ねる。

Posted 2023.02.02
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今では、冷蔵庫に常備している人も多い「塩こうじ」。米こうじ、塩、水を混ぜ合わせた調味料で、肉や魚を漬けて調理すると、素材がやわらかく仕上がったり、旨みがぐんとアップすることで知られるお役立ちアイテムです。

爆発的な塩こうじブームが起きたのは2011年から翌年にかけて。その仕掛け人がいるのは大分県佐伯市(さいきし)。現在も、国内はもちろん世界に向けて「こうじ」のすばらしさを発信し続けています。

江戸時代の文献を元に誕生した「塩こうじ」

米こうじが広げられている
米こうじは、蒸した米にこうじ菌をふりかけて発酵させたもの。

発酵大国・日本で、古くから食生活に欠かせない存在のひとつに「こうじ」があります。日々の食事で当たり前のように口にしている、醤油、味噌、みりんなどの発酵調味料は、こうじなくしてはつくることができません。

こうじには、「麹」と「糀」の2種類の文字が存在します。前者は中国から伝わった漢字で、後者は江戸時代、朱子学者の新井白石によってつくられた日本の国字。一般的に「麹」は米、麦、大豆などの穀類を材料にこうじ菌を繁殖させたこうじ全般を、「糀」は、米を材料にした米こうじを表すといいます。

〈糀屋本店〉の外観
江戸時代から334年続く〈糀屋本店〉。通りをはさんだ向かいの建物では、こうじを使ったワークショップなどを開催しています。

元禄2(1689)年、大分県佐伯市に創業した〈糀屋本店〉は江戸時代から続くこうじの専門店。9代目の浅利妙峰(あさりみょうほう)さんは、自らを“こうじ屋ウーマン”と名乗り、世界を股にかけて活躍しています。

「昔は、どこの家でもこうじから味噌や醬油をつくるのが一般的でした。時代の流れとともに、手間をかけて自分たちで仕込む機会が減り、味噌や醤油は市販品を買うのが当たり前に。こうじの店は次々に姿を消していきました。家庭で自家製味噌をつくる文化が残っている佐伯市でも、5軒あったこうじの店が今ではとうとう〈糀屋本店〉だけに……」と浅利さんは話します。

浅利妙峰(あさりみょうほう)さん
〈糀屋本店〉9代目の浅利妙峰さん。

こうじだけの商売では経営が厳しくなり、さまざま方策を立てながら努力していたと浅利さん。

「店を立て直すために一念発起し、もう一度、こうじが必要とされる機会はないか? 味噌、醤油以外のこうじを使った発酵食品を開発できないか? とっかかりを探そうと、発酵、料理、食文化など手当たり次第、歴史的な文献などを手にしました」

『本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)』の書影
こうじを使った商品を新しく開発しようと、さまざまな本を参考にしたなかで出合った江戸時代の文献。塩こうじが誕生するきっかけに。

そこで出合ったのが、江戸時代に記された『本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)』です。日本の食材の効果効能がまとめられた百科事典のようなもので、読み進めていくうちに「塩麹漬」という記述を発見。〈糀屋本店〉の塩こうじが生まれるヒントになりました。

「塩と同じように使える調味料をつくったら、うまくいくに違いない」と考え、米こうじ、塩、水を使って試行錯誤を重ねた浅利さん。遂に完成したのが、世の中に旋風を巻き起こした塩こうじです。

袋詰めされた自家製米糀
自家製 米糀(大分県産米)1kg 2100円。
白い菌糸が伸びている米こうじ
ふわふわとした白い菌糸が伸びて米の表面を花のように覆っている状態。この様子を表現したのが“糀”という文字です。(写真提供:糀屋本店)

そもそも塩こうじとはどんな調味料なのでしょうか? そのつくり方はとても簡単です。米こうじと塩、水を混ぜ合わせて、1日に1回かきまぜながら1週間から10日ほど熟成させればできあがり。冷蔵庫に入れておけば、3か月ほど保存がきくといいます。

調味料が並ぶショーケース
店内にあるショーケースには、こうじを使った調味料が各種ラインナップ。

はじめはブログや口コミで広まり、メディアで紹介されたのを機に全国区でも知られる存在へと成長し、2011年に大ブレイク。10年以上経った今でも、食卓を彩る万能調味料として多くの人に愛用されています。

一方、浅利さんはこうじを調味料として新たに活用する方法やレシピの提案、商品開発などを手がけ、こうじ料理研究家としても活動を開始。活躍の場を日本から海外へと広げて、講習や講演会を積極的に開いています。


こうじ菌をつけた米を手でほぐす作業
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健康効果とは?

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