国内外の品評会で受賞多数!
安心院スパークリングワインの魅力とは? | Page 2
手間と時間のかかる瓶内二次発酵が、きれいな味わいを生む
数々の受賞歴があるワインのなかでも、日本一の座に7度輝いているのが〈安心院スパークリングワイン〉です。用いるぶどうの品種は、シャルドネ。ほかに、メルローでつくる〈安心院スパークリングワイン ロゼ〉、日本オリジナル品種の小公子(しょうこうし)を用いた〈安心院スパークリングワイン 赤〉があります。
スパークリングワインを手がけるにあたり、スティルワインと同様に安心院産のぶどうを用いることはもちろん、こだわったのが製造方法。シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵製法を採用し、“トラディショナル方式”でつくっています。
トラディショナル方式とは、一次発酵を終えたワインを酵母、糖分とともにボトルに詰め、瓶内で二次発酵を促す製造方法のこと。
「スパークリングワインの製造を始めたのは2006年。その頃は、国内で“トラディショナル方式”を採用しているワイナリーはほとんどありませんでした。炭酸ガスを注入してつくる一般的なスパークリングワインとは異なり、手間と時間がかかりますが、それによりきめ細かな泡や芳醇な香りが生まれるんです」と、岩下さん。
訪れた時期は、秋に1度目の発酵を終えた原酒を、瓶内二次発酵を行うためにボトルへと充填している真っ最中。このとき、フレッシュな新酒だけでなく樽で貯蔵した原酒などをブレンドして瓶詰めすることで、複雑味をもたせるのが〈安心院スパークリングワイン〉の特徴のひとつだといいます。
瓶内二次発酵にかかる期間はおよそ2か月。発酵を終えた酵母がオリとなった状態で、ワインとともに瓶内熟成させることで味わいに深みが増すのだとか。最低でも1年かけて熟成されたワインは、その後、専用の機械を使って毎日少しずつ瓶を回しながら傾け、オリを瓶口へと集める「ルミアージュ(オリ下げ)」が行われます。
次は「デゴルジュマン(オリ抜き)」という作業です。瓶口に溜まったオリは、瓶の先端ごと凍らせたうえで栓を抜くことで、内部の炭酸ガスの圧力により飛び出してくるのだそう。オリを取り除いたワインに、少量のリキュールを加えて味わいのバランスを調整。仕込みから数えて15か月ほどの歳月をかけて、〈安心院スパークリングワイン〉が完成します。
“杜の中のワイナリー”をイメージした〈安心院葡萄酒工房〉の敷地内には、5ヘクタールの広さを持つあじむの丘農園(ぶどう畑)、醸造場、貯蔵庫などが点在し、四季折々の風景を楽しみながら自由に見学することができます。
ショップ併設の試飲コーナーでは、販売されている10数種類のワインの有料試飲が可能。試飲も購入も、こちらでしかできないものもあるのだとか。
国内外の品評会における輝かしい受賞歴を持ちながらも、トラディショナル方式という手間と時間のかかる製造方法を用いていることから、その話題性や人気に比して、製造量がなかなか追いついていなかった〈安心院スパークリングワイン〉。今後の展望について、岩下さんにうかがいました。
「生産量を増やすために、5年前から、コンピューター制御で24時間ルミアージュを行う『ジャイロパレット』というシステムを導入しています。手作業だけだと年間約2万本を製造するのが限界でしたが、今では約3万本に。さらに圃場(ブドウ畑)も広げているので、5~6年後には約10万本のスパークリングワインのリリースを目指しています」
近年、世界最高峰のスパークリングワインの品評会で高成績を収めたことで、海外のワイン愛好家からも少しずつ注目されている〈安心院スパークリングワイン〉。日本におけるトラディショナル方式のスパークリングワインの先駆けとして、大分で誕生して16年。今後は、日本から世界へとはばたき、安心院町の魅力あふれる風土や個性をワインとともに発信していくに違いありません。
※価格はすべて税込みです
credit text:池田祐美子 photo:MEGUMI