グラスに注がれた安心院スパークリングワインと3種のボトル
連載|おおいた食手帖

国内外の品評会で受賞多数!
安心院スパークリングワインの魅力とは? | Page 2

Posted 2023.02.17
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手間と時間のかかる瓶内二次発酵が、きれいな味わいを生む

3種類の安心院スパークリングワインのボトル
左から、安心院スパークリングワイン 赤、安心院スパークリングワイン、安心院スパークリングワイン ロゼ。

数々の受賞歴があるワインのなかでも、日本一の座に7度輝いているのが〈安心院スパークリングワイン〉です。用いるぶどうの品種は、シャルドネ。ほかに、メルローでつくる〈安心院スパークリングワイン ロゼ〉、日本オリジナル品種の小公子(しょうこうし)を用いた〈安心院スパークリングワイン 赤〉があります。

二次発酵へと進むワインの瓶がレーンを流れている
一次発酵後のワインと酵母、糖分を瓶に充填してから仮栓をして、二次発酵へと進みます。
機械による仮栓作業
現在、スパークリングワインの生産量は年間約3万本。

スパークリングワインを手がけるにあたり、スティルワインと同様に安心院産のぶどうを用いることはもちろん、こだわったのが製造方法。シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵製法を採用し、“トラディショナル方式”でつくっています。

トラディショナル方式とは、一次発酵を終えたワインを酵母、糖分とともにボトルに詰め、瓶内で二次発酵を促す製造方法のこと。

「スパークリングワインの製造を始めたのは2006年。その頃は、国内で“トラディショナル方式”を採用しているワイナリーはほとんどありませんでした。炭酸ガスを注入してつくる一般的なスパークリングワインとは異なり、手間と時間がかかりますが、それによりきめ細かな泡や芳醇な香りが生まれるんです」と、岩下さん。

瓶をライトの前を通過させて異物の混入をチェック
瓶の中に異物が混入していないか、1本1本チェックをしている様子。
目視による品質チェック
目視による品質チェックを済ませた後、貯蔵庫へ運び熟成させます。

訪れた時期は、秋に1度目の発酵を終えた原酒を、瓶内二次発酵を行うためにボトルへと充填している真っ最中。このとき、フレッシュな新酒だけでなく樽で貯蔵した原酒などをブレンドして瓶詰めすることで、複雑味をもたせるのが〈安心院スパークリングワイン〉の特徴のひとつだといいます。

専用コンテナに数多くの瓶が並べられている
瓶内二次発酵初期の段階。貯蔵庫内で瓶に風があたらないように、ビニールで覆って保護をします。

瓶内二次発酵にかかる期間はおよそ2か月。発酵を終えた酵母がオリとなった状態で、ワインとともに瓶内熟成させることで味わいに深みが増すのだとか。最低でも1年かけて熟成されたワインは、その後、専用の機械を使って毎日少しずつ瓶を回しながら傾け、オリを瓶口へと集める「ルミアージュ(オリ下げ)」が行われます。

コンテナが少しずつ回転している
瓶内二次発酵を終えた酵母のオリを最終的に取り除くため、少しずつ瓶を回してオリを瓶口に集める作業。1本ずつ手作業で行うのと並行して、「ジャイロパレット」という、コンピューターによる自動制御でルミアージュを行うシステムを導入。ひとつのコンテナに500本収めることができます。

次は「デゴルジュマン(オリ抜き)」という作業です。瓶口に溜まったオリは、瓶の先端ごと凍らせたうえで栓を抜くことで、内部の炭酸ガスの圧力により飛び出してくるのだそう。オリを取り除いたワインに、少量のリキュールを加えて味わいのバランスを調整。仕込みから数えて15か月ほどの歳月をかけて、〈安心院スパークリングワイン〉が完成します。

光にかざしてオリの状態を確認中
オリ抜きは重要な工程のため、念入りにオリの状態をチェックします。
瓶の底にたまったオリ
瓶の底にたまった沈殿物がオリ。時間をかけて少しずつ瓶の口へと落として集めていきます。

“杜の中のワイナリー”をイメージした〈安心院葡萄酒工房〉の敷地内には、5ヘクタールの広さを持つあじむの丘農園(ぶどう畑)、醸造場、貯蔵庫などが点在し、四季折々の風景を楽しみながら自由に見学することができます。

ショップ併設の試飲コーナーでは、販売されている10数種類のワインの有料試飲が可能。試飲も購入も、こちらでしかできないものもあるのだとか。

〈安心院葡萄酒工房〉のショップスペース
時期により限定品も並びます。

国内外の品評会における輝かしい受賞歴を持ちながらも、トラディショナル方式という手間と時間のかかる製造方法を用いていることから、その話題性や人気に比して、製造量がなかなか追いついていなかった〈安心院スパークリングワイン〉。今後の展望について、岩下さんにうかがいました。

「生産量を増やすために、5年前から、コンピューター制御で24時間ルミアージュを行う『ジャイロパレット』というシステムを導入しています。手作業だけだと年間約2万本を製造するのが限界でしたが、今では約3万本に。さらに圃場(ブドウ畑)も広げているので、5~6年後には約10万本のスパークリングワインのリリースを目指しています」

シャンパングラスに注がれた〈安心院スパークリングワイン〉
〈安心院スパークリングワイン〉は、爽快かつ溌剌とした上質な果実味を味わえます。

近年、世界最高峰のスパークリングワインの品評会で高成績を収めたことで、海外のワイン愛好家からも少しずつ注目されている〈安心院スパークリングワイン〉。日本におけるトラディショナル方式のスパークリングワインの先駆けとして、大分で誕生して16年。今後は、日本から世界へとはばたき、安心院町の魅力あふれる風土や個性をワインとともに発信していくに違いありません。

Information
安心院葡萄酒工房
address:大分県宇佐市安心院町下毛798
tel:0978-34-2210
access:JR柳ケ浦駅から車で約30分、安心院ICから車で約5分
営業時間:9:00〜16:00(園内見学は17:00まで)
定休日:火曜(祝日の場合は営業)、年末年始
入園料:無料
web:安心院葡萄酒工房

※価格はすべて税込みです

credit text:池田祐美子 photo:MEGUMI

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