割った竹を細くする作業
連載|日常を楽しくする、大分の手仕事

盛りざるからかごバッグまで、
別府竹細工の日用品。
竹職人・大谷健一さん | Page 2

Posted 2021.10.29
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竹の強さもしなやかさも、引き出すのは「人の手」です

「竹は決して思いどおりにならないんです。人間と同じで、強制的に言うことを聞かせようとすると反発してくるんですね。そこを何とかなだめすかして、竹が行きたいと思う方向に行かせながらも、人間の思う形に持っていくのがおもしろいんです」

竹を手割りする大谷さん
竹を手割りする大谷さん。別府竹細工は全国に236品目ある伝統工芸品のひとつ。
竹割包丁が2本
道具は「竹割包丁」と呼ばれる包丁のみ。

そう言いながら、ヒゴづくりを始めた大谷さん。手にしているのは「竹割包丁」。刃と持ち手の間に胴金(どうがね)という輪っかがついているのが特徴です。

「ほかの地域では竹を割るのに鉈(ナタ)を使いますが、別府では包丁を使う。竹を割るのも、皮を剥いで細くするのもこれだけなんですよ」

竹をさらに細くする工程
割った竹をさらに細くする。このときに鳴り響く音がカッコいい!

カリリリリッ、パリリリリッ。竹を割る音がこんなに爽快なものだなんて知らなかった! 胸のすくような気持ちのいい音が工房内に響き渡ります。竹の根本のほうに包丁を当てて割れ目をつくったら、そこへ刃物の厚みを押し込んでいくように割り進めるのですが……。

「実は“同じ幅で”“まっすぐに”割るのがすごく難しいんです。よく、まっすぐな性格を“竹を割ったような”と言いますけど、そんなことはまったくない。竹の繊維の力に負けないように加減しながら割らないと、まっすぐどころか、先がどんどん細くなってしまいます」

均等な細さに割かれた竹
竹の繊維は細かくて複雑。ゆえに、まっすぐ均等な細さに割くのが難しい。

何等分かに割って細くしたら、次は竹の内側を剥いで皮と身に分ける工程です。実際に使うのは皮の表面の、薄さ0.5ミリくらいの部分だけ。包丁の胴金を当てて、均一に剥いでいくのがまたひと苦労。

「皮の表面だけを1回で薄く剥ぐことができればラクなんですけれどね。細かく複雑に繊維が入っているため、そういうわけにはいかないのが竹という素材。まず半分の薄さに剥ぎ、さらにその半分……と3回、4回に分けて仕事をしないと、きれいに薄くならないんです」

竹の皮と身を剥ぐ工程
包丁の胴金(輪っかの部分)を押し込むようにして皮と身を剥ぐ。これを3~4回繰り返す。

さっきはカリリリリッと大きな音を鳴らしていた竹ですが、大谷さんの手元で細くなるにつれ、その音もやさしく穏やかになっていく。工房内では大谷さん、一木さん、網中さんがそれぞれのペースで作業をしているため、割ったり剥いだりの異なる音が重なりあって合奏のよう。

地道な作業を繰り返して細く薄くしたヒゴを、さらに面取り(角を取る作業)したら、ようやく材料のできあがりです。「竹の仕事は8割がたがヒゴづくり。この工程が一番重要なんです」

完成したヒゴ
完成したヒゴは、軽くてよくしなるけれど強靭で弾力があって、くるっと丸めたり結んだりもできる。

こうして完成したヒゴでかごやざるを編むのですが、驚くのは簡単なガイドラインが引かれた下地紙以外、詳細なデザイン画も設計図もないこと。細かな模様編みも美しいカーブも、長年この仕事を続けてきた手と目の感覚によってつくられるのだとか。

「ある程度の厚みをもたせたまま曲げたいときは、少し厚くしておいたヒゴをこうやって剥ぐこともあります」と大谷さん。「こうやって」とは、剥いでバラバラにするのではなく、片方の端はつなげたまま2枚にスライスした状態にすること。こうすることで、曲げるときに外円と内円の間に隙間ができ、強さや厚みやどっしりした雰囲気はキープしつつ、しなやかな曲線を描けるのです。

ヒゴに仕掛けを施す
細かな仕掛けを施してこそ、竹ならではの美しさを生かすことができる。

「竹細工の強さもしなやかさも、人間がきちんとコントロールして初めて引き出せる。そこがおもしろいところであり、“何でもつくれるわけではない”理由です」


八ツ目編みのカトラリー入れを編む
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