盛りざるからかごバッグまで、
別府竹細工の日用品。
竹職人・大谷健一さん | Page 3
生活を彩る日用品と、心を潤す新しいデザインと
「四ツ目編みや六ツ目編みといった伝統的な編み方に、縁起のいい亀甲模様。さらにアレンジした“亀甲くずし”なんていうのもあります」
竹ヒゴを交差させ、押さえ、くぐらせたりすくったりして編んでいくことで、しなやかな1本の線だったヒゴが、頼もしい造形に変わっていく。その力強さと美しさで、日常生活を少しでも楽しくできたら――と大谷さんは語ります。
「真竹の最大の特徴は“弾力と緊張感”。竹のそういう性質や美しさを生かすものづくりをしたいといつも思っています。一番の手本になるのは、昔からつくられてきた古いものですね。長く残ってきたものの形を見ることが、何よりの勉強になる。
たとえば台所で使う米とぎざるや野菜かごのようなもの。毎日あたりまえのように使う生活道具ですから、昔の人は美しいものをつくろうなんて思わずに制作していたのかもしれない。でも、結果的にとても美しい造形になっているんです。たぶんそれは、竹だからできる形と、より使いやすいものを求めて考え工夫し続けた人間の知恵とが、ぴったり合って生まれた美しさなのでしょうね」
そう語る大谷さんが、仲間である一木さんや網中さんとともに目指しているのは、「別府竹細工の伝統を伝えていくこと」や「いまの暮らしに合うものをつくること」だけでなく、「これからの新しいものづくりにも挑戦すること」。工房には、普段使いしたくなる日用品だけでなく、海外の展示会に向けてつくったアートピースのような作品もたくさん並んでいます。
「別府竹細工のいいところは、小さな地域の中に多くの職人がいて、いろんなものがつくられていることだと思うんです。それこそ、焼き鳥の串から美術工芸品まで何百種類もある。つくり手がみな切磋琢磨しているし、バリエーション豊かなものに触れることで技法やデザインにも日々新たな気づきがある。そういう“地力”を持っている土地だと思います。まあ、日々修業ですよね。なにごとも、満足したら終わりなので」
web:studio 竹楓舎
1965年埼玉県生まれ。別府竹細工伝統工芸士・一級竹工芸技能士。造園業に携わるなかで竹垣の美しさに目覚めたことから竹職人の道へ。大分県竹工芸訓練支援センター竹工芸科で学んだ後、伝統工芸士の油布昌伯に師事。2005年に〈studio 竹楓舎〉を開く。ミラノやアムステルダム、ニューヨークなど海外での展覧会も好評。
*価格はすべて税込です。
credit text:輪湖雅江 photo:白木世志一