世界初の竹のアクセサリーブランド。
〈MIKAI BAMBOO〉麻生あかりさん | Page 2
好きなことで食べていく。伝統技術をアップデート
数々の竹細工を生み出す麻生さんですが、実は出身は兵庫県。そんな彼女が、どのようにして大分で竹藝家を志すようになったのでしょうか?
「もともと自分で手を動かして何かを生み出すことが好きだったのですが、『手仕事でごはんを食べていくのは難しいだろうな』と思って会社員をしていたんです。でも会社員があまり向いていないと感じて退職し、一旦クールダウンしようと思ってパリに留学しました。その当時、趣味で江戸の伝統工芸『つまみ細工』を作っていたのですが、ホームステイ先の方にプレゼントしたらめちゃくちゃ喜んでくれて。ただの布切れを立体物に構築しただけの簡単なものだったのに、すごくうれしかったですね。それで『ものづくりってやっぱりいいな、一生の仕事にしたいな』と思ったのが最初です」
そこで、日本の伝統技術への関心が高かった麻生さんが辿り着いたのが、竹工芸の知識と技術を学べる、日本で唯一の公立校〈大分県立竹工芸訓練センター〉でした。
しかし、現実はそう甘くありません。入学前には「竹細工はニッチな世界で技術も高度。技術さえ身につければ職人として食べていける」と思っていましたが、職人さんの現状は麻生さんの想像とは異なるものでした。
「高い技術があっても、作品とコストのバランスが見合っておらず、正当に価値が反映されていなかったんです」
そこから自分の作品をどうマネタイズしていくかを考えた末、2016年に竹のアクセサリーブランド〈MIKAI BAMBOO〉が誕生しました。
今年で7年目を迎えた〈MIKAI BAMBOO〉。「未開の世界を切り拓き、新しい幸せを」というブランド名に込められた想いを体現すべく、現在はアクセサリーのみならずオブジェやアート作品など、幅広いかたちで竹の新しい世界を開拓しています。
ブランド立ち上げからここまでの間、「時にはプレッシャーを感じることもありました」と話す麻生さんですが、今は「シンプルに自分がつくりたいものをつくることが良いのかも」と思うようになったと、7年間の気持ちの変化を語ります。
「最初、想像していたよりも早くにいろんな方に見て頂ける機会があり、大変ありがたかったです。その分有名な作家さんの作品と同じ場所に自分の作品が並ぶことにプレッシャーを感じたというか……。でも月日を重ねて、アクセサリーでもアートでも『すごくすてき!』『こういうのが欲しかった』という感想を丁寧に伝えてくださるお客様にたくさん出会い、そういったリアルな声が積み重なって、少しずつですが自信につながっているように感じます。だから今は、自分がつくりたいものに集中すべきだなと思っているんです」
現在は、「とにかくどんどん作品をつくっていきたい」と意欲的に話す麻生さん。近い将来には、これまで考えたことがなかった個展の開催も考えているといいます。