世界初の竹のアクセサリーブランド。
〈MIKAI BAMBOO〉麻生あかりさん | Page 3
シンプルで潔い。発想次第で無限に広がる竹細工の魅力
「とにかくどんどん作品をつくっていきたい」という麻生さんの言葉通り、工房の所々にさまざまな竹細工や、制作中の作品が飾られています。
自身の制作スタイルについて「集中してひとつの作品に取り組むよりは、並行していくつもつくるのが好きなタイプ」と分析。「この技法を使ったらどうなるかな?」「こんなことやってみたい!」と頭に浮かんだアイデアを自由に形にしていく過程でさらにアイデアが浮かび……といったかたちで作品を編んでいくことが多いといいます。
しかし、想いを形にするのは大変な作業。何百種類もある竹細工の編み方や技法から作品によって適切な技を選び抜くのです。必要な長さや幅にカットした竹は専門の刃物で不要な部分を削り落とします。この作業は「ひご取り3年」と呼ばれるほど、竹細工で重要であり、1本つくるだけでも技術と時間が必要になります。
実際に、麻生さんに制作の様子を見せてもらいました。こちらは、「網代編み(あじろあみ)」という代表的な技法。太めで平たい竹ひごを選び、縦横を交差させ、目をずらしながら丁寧に編んでいきます。
制作には時間も根気も必要ですが、必要な道具は意外にもシンプル。麻生さんも、その“潔さ”が竹細工を生業にしたいと思った理由のひとつだといいます。
「竹細工は鋸(のこ)と刃があればつくれる。極端にいうと、『刃物一本でやっていける』というところが自分の性格に合っているなと思ったんです。 例えば自分が急に江戸時代とかにタイムスリップしても、刃物一本あったら多分暮らしていけるだろうな……って」
まさに竹を割ったような、まっすぐで気持ちの良い潔さ。その一方で、「竹の持つ特性は自分の思考と相性が良いような気がします」と語ってくれました。
竹細工の伝統と技術を守りながら、新しい世界を切り開いていく〈MIKAI BAMBOO〉。ブランド名の通り、制作における麻生さんのモットーは「同じことをやり続けないこと」だといいます。
「同じことを続けることはもちろんすごいことだと思うのですが、私はひとつのことに執着せずに、視野を広くもって変わり続けていきたい。同時に、いろいろな人の仕事を見て尊重して、うまく融合させていけたら良いなと思っています」
頭の中には「やりたいことや、つくりたいものが常にある」という麻生さん。今後も竹細工を通して、私たちに新しい世界を見せてくれるに違いありません。
兵庫県生まれ。2016年に大分県竹工芸訓練センターを卒業後、〈MIKAI BAMBOO〉を立ち上げる。豊後高田の工房を拠点に、世界初の竹のアクセサリーブランドとして、日本の職人が海外で活躍するためのプロジェクト「LEXUS NEW TAKUMI PROJECT 2017」に大分県代表として選出されたほか、「ミラノデザインウィーク」への出展、パリでのワークショップなど国内外で注目を集めている。web:MIKAI BAMBOO Instagram|@mikaibamboo
*価格はすべて税込です。
credit text:大西マリコ photo:黒川ひろみ