竹田のアートシーン開拓者。
美術ユニット〈オレクトロニカ〉
衝動的美術ユニットが見つけた竹田の意外な魅力
豊後竹田駅から車で5分、なんとか車が1台通れるくらいの小径の坂沿いに、昔ながらの古い民家が長屋のように立ち並ぶ一画があります。
長年修繕を重ね続けたためにそうなったのか、外壁に土壁やトタン、木材などさまざまな素材がパッチワークのように組み合わされたその建物は、美術ユニット〈Olectronica(オレクトロニカ)〉がギャラリー兼アトリエとして構える〈Gallery 傾く家〉です。
オレクトロニカとは、加藤亮さんと児玉順平さんのふたりによる美術ユニットのこと。
これまでに手がけてきた作品は、高さ約5メートルもある直立の白い巨人『Flags』のような迫力のあるものもあれば、小さな空間で景色をつくり出す『figure』シリーズ、はたまた空間デザインや、大型のインスタレーションまで。いつもどこかに「景色」を感じさせる作風で、その場にいる人々を魅了し、楽しませてくれます。
ふたりはともに1984年生まれで、出会いのきっかけは同じ大学の彫刻のゼミに入ったことだったそうです。
「卒業後はふたりとも就職せずに、(豊後大野市の)緒方町の一軒家を安く借りて工房兼住居にしていました。当時はまだバイトをしながら個別で制作していたんですけど、ゆくゆくは自分たちがつくったものを売って生活していきたいと考えるようになって、それで立ち上げたのがオレクトロニカだったんです」(加藤さん)
美術家としての活動も少しずつかたちになりつつあった2011年の4月、骨董を扱う知人の紹介で現在の場所に拠点を移すことになったふたり。縁もゆかりもなかったこの土地に移住を決意するほどの魅力があったのかと尋ねてみると、最初はそれほど特別に感じていたわけではなかったそう。
「実はここに来るまで竹田のことをあんまり知らなかったんですよね。どこかへ行く途中に通り過ぎるくらいで、移住先として意識もしていなかったです」(児玉さん)
しかし、しばらく竹田で暮らしてみると、まちの魅力が徐々にわかってきたといいます。
「移住した頃はいまよりも空き店舗が多くて、僕らが突然『明日、あの空き店舗で物を売ってみよう』ということになっても、家主さんたちは快く貸してくださったりして、衝動的な僕たちにとってはすごく動きやすかったですね」(児玉さん)
展示や活動の場所として利用できるスペースがまちのあちこちにあるというのは、アーティストである彼らにとって大きな魅力。そんなまちの魅力をフルに活用すべく、ふたりはアートイベント「竹田アートカルチャー2011」を企画したのです。