路上販売から人気アーティストへ。
画家・北村直登さん | Page 2
路上からインターネットでの販売へ
実は福岡県出身の北村さん。大分県にやって来たのは、たまたまだったといいます。そもそもアーティスト志望でも、美術を学んでいたわけでもなく、なんと高校時代はブラジルにサッカー留学していたほどのサッカー少年だったのだとか。
「1年間ブラジルに行っていて、復学先が大分県の佐伯市だったんです。本当はサッカーの道へ進みたかったんですが、大学2年のときに諦めて。じゃあ何をしよう、と考えていたなかで、たどり着いたのが絵でした」
東京に行ったときに表参道の路上で絵を売っている人を見かけ、これだ! と思いたち、さっそく表参道で絵を描いて並べてみたそう。その行動力も驚きですが、みごと絵が売れたというのだから、感服。本気で絵を生業にしていこうと決意した北村さんは、大分に戻り、路上で絵を売る日々を送ります。
「10時間くらい座り続けて1枚も売れない日も。そんなときは涙が出そうになりました。たくさん売れた次の日だけ休んでいいと決めたのですが、逆にそういうときは翌日も売れる気がして(笑)。それを毎日繰り返していましたね」
半年ほど続けていると、カフェで個展をやってほしいといった声がかかるように。そんなご縁も大事にしながら、やがてインターネットでの作品販売に移行。それがメディアなどでも取り上げられるようになり、ファッションブランドのギャラリースペースでも展示されるなど、活躍の場を広げていったそう。そんな縁が重なって、ドラマ『昼顔』での作品使用につながったのでした。
ドラマの大ヒットもあり、北村さんの絵の売れ行きも絶好調。でもそれで天狗になることはありませんでした。
「ドラマで出た人気なので、これは一時的なものだと思いました。だからそのときも、これまで取り扱ってくれたところをより大切に活動するようにしました。僕がいま大分に根づいているのも、路上で絵を売っていたときに買ってくれた地元の人たちのおかげなので。大分の画家になれたらいいなと本気で思い始めていましたね」
北村さんは、大分の人に恩返しするような気持ちで、いまも大分で絵を描き続けているのです。