店内でインタビューを受ける香内宏文さんと香内リツコさん
連載|あの人に会いたい!

自家製レモングラスオイルを全国へ。
〈レストラン サルディナス〉
香内宏文さん&香内リツコさん | Page 2

Posted 2023.03.06
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震災を経てたどり着いた食の理想郷、下郷地区

もともと栃木県の那須塩原市でエスニック料理店を営んでいた香内さんご夫妻。大分への移住のきっかけは2011年の東日本大震災でした。これまでに経験したことのない揺れと、錯綜する福島第一原発事故の情報に不安を感じ、震災の翌日にはふたりの子どもを連れて地元を離れようと車で出発したそうです。

店内でインタビューを受ける香内宏文さんと香内リツコさん

先に避難していた知人を頼りに行き着いた先が福岡県。やがて人づてに大分県中津市内のキャンプ場のバンガローを紹介され、3月の末には一家で移り住むことになったそうです。

いち避難民として一時的な暮らしをスタートさせた香内さん一家でしたが、少しずつ大分の風土と避難生活にも慣れてきた頃、手持ち無沙汰を解消しようと、バンガローの前でコーヒー屋を始めることに。

「避難民として取材を受けたことがあったんですが、それを見た近所の人がお菓子や子ども服を持ってコーヒーを飲みに来てくれたりして。うれしかったですね」(リツコさん)

キッチンに立つ香内リツコさん
レストランの奥にあるキッチンで料理の支度をするリツコさん。

地元の人のあたたかさと同時に、ご夫妻はこの恵まれた土地そのものにも魅了されたと語ります。

「しばらくして、この下郷地区が有機農業で有名な地域だということを知りました。その昔、長野から移住してきた人たちがこの辺りの山を開拓し、酪農を始めたそうなんです。彼らがここの下郷農協を昔から支えていたと聞いて、いい場所だなとあらためて思いました」(宏文さん)

「那須にいたときは住宅街でお店を営んでいたので、普通にスーパーで食材を買うことが多かったんですけど、ここは下郷農協のおかげで、野菜もお米も有機農家さんから直接買うことができるのがすごくいいですよね」(リツコさん)

山の風景が広がるサルディナスからの眺め
サルディナスからの眺め。住宅の屋根の向こうには山国川が見えます。

昔ながらに移住者が多く、空気も水も野菜も米もおいしい下郷のすばらしさに引き込まれた香内さん夫妻。気がつけばこの土地で以前のようなレストランを始めようという気持ちが芽生えていたそうです。

入口扉の脇に書かれた「Restaurant Sardinas」の文字
入口扉の脇に「Restaurant Sardinas」の文字。サルディナスはスペイン語でイワシの意。

その後、キャンプ場の空き倉庫を借り、改装して、那須時代と同じ名前のエスニック料理店を開業。数年後の2019年5月には、見晴らしのいい古民家を住居兼レストランに改築、レストラン サルディナスとしてオープンさせました。

アンティークな木製家具が使われた宿泊用客室
宿泊用客室。おいしい食事とワインを楽しんだらそのまま泊まれるのが魅力。
ベッドスペースとロフト
ロフトもあり、ダブルとシングルのマットがあるので最大5人宿泊可。

この下郷地区を目指してやって来たわけでなかった香内さん夫妻。震災をきっかけに食材と環境が整ったこの土地にたどり着くことができたのは、食の神様によって引き寄せられた、運命だったのかもしれません。


店内で販売されている自家製調味料
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が生む地域の循環

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