アートディレクター/デザイナー福田まやさん
連載|あの人に会いたい!

愛する耶馬溪のよさを
グッドアイデアで届ける
アートディレクター/デザイナー福田まやさん

Posted 2021.05.18
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10代で耶馬溪(やばけい)移住を考えるようになったワケ

耶馬溪の木々の新緑に藤の花が彩りを添える春の日。私たちは、2012年に大分県北部の中津市耶馬溪町に移住したアートディレクター/デザイナーの福田まやさんを訪ねました。

福田さんが暮らす集落は、手彫りのトンネルとしても有名な青の洞門から車で約25分ほど。土産屋や食事処が立ち並ぶ観光地然とした界隈を過ぎて、いくつかのトンネルをくぐり抜け、棚田の並ぶ山道をグングンと登っていくと、木漏れ日の中に佇む家がありました。

青の洞門
耶馬溪エリアの中でも有名な観光スポット「青の洞門」。江戸時代、禅海和尚と石工たちにより約30年の月日をかけてノミと金槌で彫られた洞門(トンネル)は、削られた洞の内側を見上げると、ノミのあとがしっかりと残っていました。
古羅漢
耶馬溪では岩山が織りなす不思議な光景が多く見られます。こちらは「古羅漢(ふるらかん)」と呼ばれる絶景スポット。

まやさんは、奈良市内の春日大社や大仏などの観光地にほど近い新興住宅地で生まれ育ちました。大分との出会いは思いのほか早く、10歳の頃から毎年この耶馬溪の集落を訪れていたそうです。

「もともと母の友人が耶馬溪に移住していて、ゴールデンウィークの時期に毎年遊びに来ていたんです。子どもの頃、行きがけのバスから見えた山々にかかる朝靄の景色は、いまでもはっきりと覚えています。

ここでは川遊びや、猟師さんが仕留めたとれたての鹿を食べたり、しいたけの収穫をしたり、それにもちろん温泉も! それがとっても楽しくて。10代の後半あたりから、いつかはこういうところに住みたいなと思うようになっていました」

愛犬の「にわ」ちゃんと福田さん
愛犬の「にわ」ちゃん(シェパード)。取材中は外につながれていましたが、その間もしきりにジャンプ! 私たちにすばらしい「歓迎の舞」を見せてくれました。とにかく元気いっぱい。

年に1度、旅行先の耶馬溪で過ごす日々は「暮らす」ような体験だったと振り返るまやさん。当時から集落の人々との交流もあったことから、移住する際もすんなりと溶け込むことができたそうです。

まやさん夫妻が借りている畑
自宅から車で数分、見晴らしのよい高台にまやさん夫妻が借りている畑がありました。夫の毅さんは庭師で、おいしいスイカをつくる名人。夏には10キロ近い大きなスイカがごろごろととれるそうです。
スナップエンドウを収穫
訪れた時期はちょうどスナップエンドウ収穫の季節。最近畑は毅さんに任せっきりとのことで「こんなときだけ私が収穫しちゃって怒られそう(笑)」。お土産にともらったスナップエンドウは、みずみずしく歯ごたえ抜群のおいしさでした。田んぼもあり、自分たちが食べるお米もつくっています。

私たちが訪れた日は、月に2回開催されている集落のイベント「農家食堂」の日。

まやさんの家の隣に木工所を構える中島信男さんたちの呼びかけで始まった、集落のみなさんで集まって、食卓を囲むというものです。

ピザを調理中
調理と盛りつけは、数年前に移住してきたビーガン料理のシェフと移住者の女性陣。地元の食材を使い、この日は炭焼き窯を利用した手づくりピザが振る舞われました。
猟師の上原市策さん
炭焼き窯でピザを焼いていたのは猟師の上原市策さん。まやさんが10代の頃からかわいがってくれているそう。
焼きあがったピザ
わずか数分でおいしそうなピザが焼き上がります。

この日集まった人々の顔ぶれを見ると、昔からここに暮らすおじいちゃん、おばあちゃんを中心に、30~40代の移住者も。和気あいあいと同じ皿のピザを頬張ります。

「農家食堂」発起人の中島信男さん
自作の包丁でピザをザクザク切り分けるのは、「農家食堂」発起人の中島信男さん。この樋山路という集落で「樋桶の郷」という組合をつくり、共同で田んぼを管理したり、若い人たちが働く場所として納豆や味噌の工房をつくったり。今年はお菓子工房も開く予定です。

「この集落のおじいちゃん、おばあちゃんたちって外から来る人に対して全然閉じてないんですよ。それに、ほかの地域に比べるとこまめによく集まるんです。

この辺りではいろいろなお祭りなども残っているし、“たのもし(頼母子講)”といって毎月公民館に集まって、みんなからお金を集めて、クジで当たった人がそのお金をもらえる互助文化が残っていて。いまはクジですが、昔は、たとえば子どもが大きくなって自転車を買いたいという家庭にその集めたお金をあげていたとか。日々助け合っているというか、集落がひとつの共同体という意識があるのかも」

イベントの参加者
まやさんの話を聞いたあと、大きなテーブルを囲んで食事する集落の人々を思い返してみると、なるほど、ひとつの大きな家族といった印象です。
農家食堂の外観
地域の人が集まる〈農家食堂つうだらだった〉。ここも組合「樋桶の郷」によって運営されています。

キッチンに立つ福田さん
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