湯治の癒しを日常に。
別府・鉄輪温泉発のブランド
〈HAA〉池田佳乃子さん | Page 3
全社員フルリモートという働き方
東京と別府の2拠点生活も、今年で8年目。当時は「夫婦が別々に暮らすなんて」「ワーケーションって何?」と、共感や理解をしてくれる人が少なかったものの、コロナ禍を経て「手探りで始めたことが、やっと一般的になってきた」と感じているそう。

そんな池田さんがプロダクトづくりと同時に取り組んでいるのが、フルリモートの会社運営。創業時はすべてをひとりで担っていましたが、いまでは社員が6名にまで増えました。2名は別府に住んでいますが、4名は関東や東海地方で暮らし、池田さんは東京と別府の2拠点生活。全員がフルリモートで働いています。

「『日常に、深呼吸を届ける』というミッションを持った会社だから、自分たちが休めてなかったら意味がない」と、“休めるための体制”もつくり、有給は毎年全員が必ず消化。残業もほぼありません。
ただ、新しいプロダクトづくりに奔走するなかで、海外にも販路を広げるなど、仕事は増えるばかり。池田さん自身も、ひと月のうち2週間は別府、1週間は東京、残り1週間は出張と、忙しい日々を過ごしています。
「フルリモートは本当に大変。ですが、みんなで努力したり方法を考えたりして、“働きやすい環境をつくる”ことを続けています」


HAAでは、金曜日の14時以降は打ち合わせ不可。週ごとに業務を調整し、早退できるシステムにしています。時間管理は個人に任せていますが、「ちょっと様子がおかしいな」と感じる人がいるときには、不満や不安を打ち明ける「モヤモヤ会」を開くなど、コミュニケーションも積極的に。社員が毎月、池田さんと1 on 1で話す時間も設けているそう。
別府で育ってきたものの、学生時代は湯治を知らなかったという池田さんですが、いま別府での住まいは鉄輪。ここでは、仕事をしながら日に何度も温泉に浸かる、湯治を取り入れた暮らしを実践しながら、会社として新たな働き方にも挑戦しています。

一方で、貸し間の減少は止まりません。鉄輪温泉の貸し間や湯治文化を守るため、「自分もプレーヤーとして、何か貢献したい」とも。鉄輪に戻ってきた30代や40代の“地元の跡継ぎ”など、新たな仲間も増えていて「新しい動きができそうなので、すごく楽しみ」。笑顔で深呼吸しながら、進み続けています。

大分県別府市出身。2018年から東京と別府で2拠点生活を開始し、2021年、ライフスタイルブランド〈HAA〉を設立。「日常に、深呼吸を届ける」をミッションに、“湯治”に新たな解釈を加えた商品を展開している。「湯治の文化を残す」ための新たな場づくりも探りながら、社員が“深呼吸”できる環境で暮らしながら働く、フルリモートワークにも挑戦中。
credit text:河野恵 photo:木寺紀雄