2匹の白い馬に囲まれ笑顔の小笠原じゅんこさん
連載|あの人に会いたい!

オルタナティブスクール〈YURERU〉で
馬を中心とした暮らし型セラピーを実践。
小笠原じゅんこさん

Posted 2026.09.11
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馬が先生のオルタナティブスクール

2016年に東京から竹田市に移住した小笠原じゅんこさん。地域おこし協力隊として活動したのち、馬を中心とした暮らし型のセラピーを実践する全寮制のオルタナティブスクール〈YURERU〉を立ち上げました。

森や畑に囲まれた〈YURERU〉の遠景
竹田市の城下町から車で10分ほどの場所にある〈YURERU〉。周辺の田んぼや畑、林や山などさまざまな場所で放牧された馬たちがのんびり草を食べています。

オルタナティブスクールとは、独自の教育理念やカリキュラムで運営する、新しい選択肢となり得る学校のこと。YURERUでは、学校に行けなくなったり、心に深い傷を抱えてしまっていたり、生きることに困難を抱えた子どもたちを受け入れ、馬を中心とした動物たちとともに暮らしをつくり、心身を整えていきます。

現在は、児童発達支援サービス、放課後等デイサービスも併設。地域の方々に支えられながら、全国から集まった子どもたちと、馬や犬、猫、ヤギ、ニワトリなど、たくさんの動物とともに暮らしています。

放牧中の2頭の馬の遠景
馬は一頭一頭、放牧の場所が決まっており、それぞれの場所の周りには電気柵をつけ、馬が外に出ないようにしています。民家に近い休耕田や林でも、近隣の住民の方々の暮らしを馬が荒らすことはありません。ご近所さんの庭にも、家主さんから依頼を受けて馬が放されていました。
草木の間から顔をのぞかせた馬
YURERUで先生となる存在は、馬。「ここには人間で“先生”と呼ばれる人はいません。私たち大人も馬に頼るし、子どもたちも馬に頼る。そして馬から、誰とも対等な“あり方”や生きるための技法を教えてもらっているんです」と、小笠原さん。

YURERUの子どもたちの朝は、放牧されている馬のお世話から始まります。まずは、担当の馬がいる場所(放牧地)までお迎え。林の中や、耕作放棄地となってしまっている休耕田から手綱を引いて拠点となる古民家に戻り、体調の確認をして、ブラッシングなどのお世話をしたり、馬場で乗馬をしたり。午前中は、それぞれの課題に合わせた方法で馬と過ごします。

YURERUに滞在中の子が馬を引いて田んぼの前を通っている
馬を引いて拠点まで歩きます。YURERUで生活する子どもたちは、10名前後。数週間から2~3年と、滞在する期間はさまざまです。

ここへやってきたときには、馬に触れたことがない子がほとんど。なかには、馬を見たことがない子もいるそう。そんななか、少しずつ馬に慣れるところから始め、次第に自分で馬のお世話ができるようになっていきます。 

馬のたてがみを三つ編みにしている様子
この日は、「馬が暑いだろうから」と、たてがみを三つ編みに。その方法も、ネットなどを使い自分たちで調べます。

実は、馬は個体を認識しない動物だそう。「人間」という大きな括りでは存在を認識していますが、「私にしか懐かないという馬や、私を飼い主だと思っている馬は1頭もいないんです。それが、犬や猫とは違うところですね」と、小笠原さん。毎日どれだけお世話をしても、翌日はまた「はじめまして」の状態になっているのだとか。

馬にとっては、男性も女性も、子どもも大人も、みんな同じ。障がいのあるなしもまったく関係なく、人によって接し方が変わることはありません。これは、実は人間にはなかなかできないことで、この特性こそが、馬がセラピーの王様といわれる所以なのです。

馬に乗って敷地内を疾走中
馬に触ったことがない子でも、すぐに馬に乗れるようになるといいます。馬も人も、とても気持ちよさそう。

ただ、時には「自分だけに優しくしてくれる存在」が必要なことも。膝に乗ってくれる猫や、尻尾を振って迎えに来てくれる犬など、自分だけに懐いてくれることで「受け入れられている」ことを実感できることがあるため、馬以外の犬や猫、ヤギもとても大切な存在です。

大きなトランポリンでくつろぐ3匹の犬
庭にある大きなトランポリンでくつろぐ犬たち。彼らもYURERUでの暮らしに欠かせない重要な存在です。
トランポリンわきに集まってきた2頭のヤギ
人にとても慣れているヤギたちにも癒やされます。

馬は心だけでなく、体にも良い影響を与えてくれるのだといいます。乗馬をすることで、「正しくきれいな骨盤の動き」を得られるのだそう。「だから、子どもだけじゃなく、大人もみんな、乗ったほうがいいですよ!」と、小笠原さん。

2人の小さな子どもが乗馬セラピーを受けている
ダウン症の子どもも、乗馬によるセラピーを受けていました。「ダウン症の子どもは馬には乗れないだろう」と言われていましたが、体幹がしっかりして、2歳前から歩行ができるようになり、軽い補助のみで馬の上に座れるようになったそう。

馬は、一般的に「うしろに立っては危険」と言われますが、YURERUの馬たちは、子どもたちが周りで騒いでいても、近くを大きなトラックが音をたてて通っても、暴れることはありません。

それには、その馬がどうやって育ったのか、またどんな調教をされてきたのかが大きく影響しています。その調教を担当しているのが、ホースインタープリターとして活躍する、小笠原さんの活動のパートナー。調教のプロ、またセラピストでもあり、日本各地で馬を中心とした暮らし型のセラピーや、牧場を支援しています。

小さい子どもが1人で馬に乗って散策中
子どもたちには、療育としての乗馬、セラピーとしての乗馬、楽しむ乗馬、乗馬技術を高める乗馬、と成長に合わせ、担当の馬を考えながらプログラムを提供していきます。

牧草地に馬を連れて行く小笠原じゅんこさん
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