2頭の馬を見晴らしのいい牧草地に連れて行く小笠原じゅんこさん
連載|あの人に会いたい!

オルタナティブスクール〈YURERU〉で
馬を中心とした暮らし型セラピーを実践。
小笠原じゅんこさん | Page 2

Posted 2026.09.11
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使われなくなった農地を放牧地に

YURERUを立ち上げた当初、手に入れることができていたのは、拠点にしている築100年ほどの古民家と、1頭のヤギだけ。しばらくして知り合いから「道産子」を1頭借り受けたことで、馬との暮らしが始まりましたが、現在のような放牧地はありませんでした。

〈YURERU〉の拠点となっている大きな古民家
YURERUの拠点となる古民家。ここで動物たちとともに、子どもたちの現状や気持ちに寄り添いながら、暮らしを整えています。

ペット以外の動物との暮らしがほぼなくなってしまった日本。当初は、馬などの大きな動物との暮らしは、周囲の方々を不安にさせてしまったといいます。しかし、地域に住む80代や90代の高齢の方々が幼い頃は、家に馬小屋や牛小屋があるのは当たり前でした。ご近所には、「小学校のとき、牛の餌の準備は私の担当だった」というおばあちゃんも。

「動物が当たり前にいる暮らしをしていた方々なので、私たちの“馬との暮らし”も受け入れてくださったのかな、と思うんです」と、小笠原さん。

一緒に暮らす保護猫を可愛がる小笠原さん
「ここにいる猫は、みんな保護猫。この子は3歳か4歳ぐらいかな。すごく人懐っこいんですよ」
猫とニワトリが対面中
動物たち同士もとても仲良し。人も動物も、それぞれの存在に支えられ、寄り添いながら暮らしています。

地道に馬との生活を続けるうち、次第に地域の方々が、いまは手入れができなくなった森林や使われなくなった田畑を、提供してくれるようになりました。

「集落のおばあちゃんが『もう、お米がつくれなくなったから、ここに馬を入れてくれないか?』って」

耕作放棄地に馬を入れることで、土地が荒れなくなります。やがて賛同者も増えていきました。

「少しずつ、少しずつ、地域の皆さんがYURERUの活動を受け入れてくださるようになっていって。放牧できる場所も増えていき、馬が地域にいることを喜んでくださるようになりました」

そして今年、新たな放牧地として加わったのが、YURERUの古民家から車で20分ほどの山。木立を抜けると一気に視界が開け、見事な景色が広がっています。

ひらけた牧草地に馬を連れてきた小笠原さん
山中にある、見晴らしのいい牧草地。暑い日や寒い日をしのげる木立もあります。

「ここに人を連れてくるとな、『うわぁ! 景色がいいな!』っち言われるんですよ」

そう教えてくれたのは、佐藤治利さん。長年、この場所に牛を放牧し、ご夫婦で牛の繁殖農家を続けてきました。しかし、ご自身が高齢になったことや奥様のご病気などもあり、数年前に繁殖農家を辞めることに。

佐藤治利さんと小笠原さんが談笑している様子
小笠原さんを応援しているという佐藤治利さん。「佐藤さんは人格者で、物事を丁寧に教えてくれたり、スタッフみんなのこともいつも褒めてくれて、私たちを理解しようとしてくださる。農業もゼロから教えていただいているんです」と、小笠原さん。

牛がいなくなると草は伸び放題になり、山は荒れてしまいますが、山中や傾斜地の多い中山間地の農地は、受け継ぐ人がいないのが現状です。今後の山の管理に悩んでいた佐藤さんが出会ったのが、小笠原さんでした。

「馬の餌となる牧草づくりを教えてほしい」という小笠原さんに、佐藤さんは「牧野は動物で管理をしていきたい。馬を入れて山が傷まないようにしてほしい」と依頼。双方の課題を解決できることとなり、準備期間を経て、今年から数頭の馬の放牧が始まっています。

広々とした牧草地で草を食べている馬
「ここはとにかく、風が気持ちいい。そして馬たちも『おいしいものがいっぱいで幸せ!』っていう感じ。子どもたちのセラピーのためにも、ストレスがない環境で育った健康な馬が必要なんです」と、小笠原さん。

移住者の新しい取り組みやアイデアは、すんなり受け入れられることが難しいこともあるなか、佐藤さんが快く受け入れてくれたのは、小笠原さんの“ある経歴”も関係していました。

「第一に、シドニーオリンピックの選手や、ちゅうことで(笑)一目置いてですね。小笠原さんの言うことに乗りましょう! と、任せることになったんです」と、佐藤さんは冗談混じりに笑いながら教えてくれました。

佐藤さんに話しかける小笠原さん
「こんなすばらしい場所をこれまでおひとりで守ってこられて、こうして受け継ごうとしてくださること、佐藤さんには本当に感謝しています」

インタビュー中に笑顔を見せる小笠原じゅんこさん
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