乾燥させて鮮やかな赤色になった竹田市産サフラン
連載|おおいた食手帖

“赤い金”とも呼ばれる香辛料サフラン。
日本一の生産量を誇る竹田〈八世屋〉で
収穫の時へ。 | Page 2

Posted 2022.12.23
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竹田サフランの歴史を守りながら、
新しい商品開発にも挑戦!

栽培小屋でサフランの花を摘む
小屋の中では最低限の明るさで作業を進めます。

「竹田市でサフラン栽培が途絶えず続いている理由が、120年前から継承されている“竹田式”の栽培方法にあります」と、話す長谷川さん。竹田式とは?

「畑に植えて太陽の下で育てるのではなく、専用の小屋の中で日の光を当てずに花を咲かせて収穫する暗室栽培が竹田式です。海外産と比べると、雌しべが太く大きく成長するだけでなく、色鮮やかで高品質のものが育つため、高く評価されています」

雌しべを抜き取る作業中
花を収穫したその日のうちに、休む間もなく花から雌しべを抜き取る作業を続けます。

高品質なサフランをつくるための手間ももちろん惜しみません。

「まず茎から1個ずつ花を摘み取り、その日のうちにそれぞれの花から3本の雌しべを収穫します。繊細な作業のため機械化が難しく、手で行うため時間と労力がかかるうえに収穫できる量はわずか。10グラムのサフランをつくるために、1000個以上の花が必要です」

淡い紫色の花
収穫したばかりのサフランの花。
雌しべを指でつまむ
6枚の花弁に包まれた3本の雌しべを、指でそっと抜き取ります。
雌しべが皿に並べられている
花から抜き取った雌しべ。このあとに乾燥させて完成です。

しかし、その一方で生産者の高齢化や後継者不足といった問題も。

「高齢化で年々少なくなっていく農家の数に比例して生産量が減少し、高価なものとなっている現状が歯がゆい。就農を希望する若い人たちが安心して移住し、竹田市全体が活性化していくような環境を、自分がサンプルとなってつくっていきたいと思っています」

お茶やポン菓子など竹田市産サフランを使った商品
左から、〈さふらんてぃー スウィート〉5包入り400円〜、〈さふらんぽん〉50g 300円〜、〈サフラン花芯〉0.5g 650円〜。
乾燥して完成品となったサフラン
鮮やかな赤色で高品質の竹田市のサフランは、国内外で高い評価を得ています。

長谷川さん夫妻はサフラン栽培の歴史を大切に守りながら、さらに発展するための商品開発も精力的に行っています。たとえば、サフランを使ったぽん菓子や、お茶とブレンドしたハーブティなど。

「日本人にあまり馴染みのないサフランを使って料理をつくるとなるとハードルが高い。まずはサフランそのものを知ってもらいたい」という発想から生まれたそう。最近では、シェフとコラボレーションして料理に活用する提案や、花びらを使ったハンドクリームや化粧品の研究も進めています。

袋いっぱいに入った花びら
雌しべを抜き取ったあとの花びらを活用した化粧品の開発も進めています。

子どもの頃からサフランに慣れ親しんでほしいと、市内の小学生に栽培の様子を見学してもらう場も設けています。サフランを手にとって匂いをかいだり、かじってみることができるのは、貴重な体験となり記憶に残るはずです。

畑に立ってインタビューを受ける長谷川暢大さん
長谷川さんは熊本県出身。宮崎県綾町で農業研修後、同地と熊本でサフラン栽培を試みるもうまくいかず、9年前に竹田市に移住してきました。今では、竹田サフランを牽引する存在です。

竹田市でサフラン栽培が始まってから約120年。“竹田式”独自の栽培スタイルを守り継ぐことで、日本一の質と量をつくり出している長谷川さん夫妻。

世界に誇るサフランを、さらに魅力あふれる竹田市ブランドとして、また大分の新たな食文化として発展させ、後世にしっかりとバトンをつなぐ。ふたりの奮闘はこれからも続きます。

Information
国産サフラン商い処 八世屋
tel:090-6430-8335
mail:saffron.atsuko@gmail.com
※商品の通信販売は電話もしくはメールにて受付
web:国産サフラン商い処 八世屋

※価格はすべて税込みです。

credit text:池田祐美子 photo:MEGUMI

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