キッチンで料理に使う蓮を準備する宇佐美友香さん
連載|おおいた食手帖

有機農業のまち臼杵市
〈うすき皿山〉で味わう
極上の蓮料理と〈ほんまもん農産物〉 | Page 2

Posted 2024.08.29
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臼杵市産の〈ほんまもん農産物〉の魅力を
多くの人に伝えたい

うすき皿山のすぐそば、国宝臼杵石仏を有する「石仏公園」には、約4400平方メートルの蓮畑が広がっています。

一面に蓮畑が広がっている
「石仏公園」に広がる蓮畑には、大賀蓮を中心に5種類の蓮の花が。夏の朝、泥の中から清らかな花を咲かせます。

ここでは2000年から臼杵市のボランティアグループ〈はないちえ〉が中心となり、地域の方々の協力のもと、5種類の蓮が栽培されています。そんな地元の風土に根づいたものを多くの人に広めようと、〈石仏観光センター〉では24年前から蓮を取り入れたお料理の提供を始めました。

蓮の花があちこちで咲いている。合間にはたくさんのつぼみも

熱心なマクロビオティックの家庭で育ったという友香さん。大学で、夫である宇佐美裕之さんとともに陶芸を学び、「料理については素人」だったそうですが、幼い頃から身についていた食に対する素養が、そのままいまの活動の原点になっているのでしょう。

結婚して裕之さんの実家がある臼杵市に移り住み、以来マクロビを本格的に学び直しながら、臼杵市独自の認証による有機野菜〈ほんまもん農産物〉を使ったケータリングやお弁当を販売しています。そして2020年から蓮の開花時期に合わせて開催している「蓮を愉しむ会」が好評を博し、全国からリピーターが訪れるほどに。

「お店で使っている蓮は自分たちの畑で自家栽培しているものもありますし、野菜は臼杵市産のほんまもん農産物を多く使っています。私が厳格な玄米菜食の家で育ったことも大きいのですが、やはり“体は食べたものでできている”という医食同源の信念が料理づくりの根本です」と友香さん。

キッチンで器用の大きな蓮の葉を準備する宇佐美友香さん

「マクロビ、和食のだし、そして重ね煮(野菜の持つ陰陽の性質に基づき、自然本来の旨みを最大限に引き出す調理法)を基本として、地元野菜の魅力を最大限に引き出せたらと思っています。料理を通して、農家の方がつくる安心でおいしい臼杵市産の野菜をたくさんの方に知ってもらえるきっかけになれたらうれしいですね。

こちらに越してきた当初は有機野菜を手に入れるのはなかなか難しかったのですが、ほんまもん農産物づくりが盛んないまの臼杵の状況は、本当にありがたいです。近年は、臼杵市にUターンやIターンをして有機農業を目指す若いつくり手が増え、積極的に関わってくれています。

また7年前からは、ほんまもん農産物をはじめ、安心な野菜をつくっている農家さんと、その野菜でつくる加工品を販売するファーマーズマーケットも開催しています。私は朝食担当ですが、出店者も20軒以上に増えて、地元にもすっかり定着しつつあります」

地元の風土に根づいたうすき皿山の活動は、地域全体にも良い刺激になっているようです。

ちなみに、うすき皿山で使われている臼杵焼の器は、夫で陶芸家の裕之さんによるもの。臼杵焼は、江戸時代後期に臼杵藩の御用窯として臼杵市末広地区でつくられていましたが、わずか10数年で途絶えてしまったことから、長らく「幻の焼きもの」とされていました。

が、20数年前、裕之さんが地元に戻ってきたことをきっかけに、現代版にリブランディングし、2015年に「臼杵焼」として復活させたのです。

食器棚で出番を待つ、たくさんの臼杵焼の器
裕之さんがつくる臼杵焼の器は、美しくマットな白磁、蓮をモチーフにした現代的なデザインが特徴。まるでフランスのアンティークのよう。

夫がつくる器が、妻がつくる主役の料理を額縁のように引き立てています。蓮の名所で、蓮料理を、蓮モチーフの器が彩るという意味でも、まさに“蓮づくし”です。

「自分たちの目指すことを続けていくために、こだわる部分は大切にしたい」と話す友香さん。夫婦で各地を食べ歩き、裕之さんは蓮料理に合わせて定期的に新作の器を発表するなど、勉強熱心。ふたりは「地元に貢献できることを続けていきたいですね」と笑顔で話してくれました。

夫の宇佐美裕之さんと友香さんが並んでツーショット
宇佐美裕之さん(左)については、こちらの記事でもご紹介しています。

〈槌本農園〉の槌本俊貴さん
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移住した若手農家

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