ザ・キャビンカンパニーの作品『キメラブネ』
連載|あの人に会いたい!

〈ザ・キャビンカンパニー〉
廃校アトリエからおとぎ話を紡ぎ出す
絵本作家ユニット | Page 3

Posted 2022.02.22
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大分駅のホームに出現した謎の怪物が日本中の話題に!

1月、「JR大分駅のホームに謎の怪物が現れ、ホームの一部を占拠している」というTwitterでの投稿が、日本中で話題となりました。禍々しいこの怪物の正体……それはザ・キャビンカンパニーの作品『キメラブネ』でした。

元喫煙スペースに展示された『キメラブネ』
これが噂の『キメラブネ』。

大分駅の禁煙化にともない、ホームに設置された喫煙スペースが閉鎖。そこを何かに活用できないかと大分県立美術館(OPAM)とJRが相談し、大分ゆかりのアーティストの展示スペースとして再利用されることとなったそうです。

「それで、私たちのところに美術館の方から『OPAM』をテーマに作品をつくってほしいと依頼がきたんです」(紗希さん)

近くで見た『キメラブネ』
近くで見るとすごい迫力……! 「OPAM at Platform of Oita Station」という企画で、 2021年12月4日から2022年3月30日まで『キメラブネ』を展示。

大分駅は県内外の人々が出入りする玄関口。大分はその昔、西洋の南蛮文化が入ってきた場所でもあり、異文化を受け入れる土壌が培われていたことを作品づくりのヒントにしたといいます。

「大分には大友宗麟というキリシタン大名がいたんですが、彼はなかなか先進的な武将で、西洋から南蛮文化を積極的に取り込んでいました。そのため16世紀の大分(府内)のまちには、虎や象や孔雀などの珍しい動物が歩いていたという文献を読んだんです。当時の人々はどういう気持ちでその動物を見ていたんだろうって、妄想が膨らみましたね」(健太朗さん)

廊下で談笑するザ・キャビンカンパニーのお二人

喫煙スペースの箱を船に見立て、見たこともない目新しい怪物(虎・象・孔雀のキメラ)が大分の玄関口に運ばれてきたという『キメラブネ』。

「美術館に行くと、国や時代を超えた多種多様な芸術・文化を見ることができます。それらが私たちの頭の中で自由に交易し、混ざり合い、作品が生み出されていくんです。南蛮文化とOPAMの共通点を見つけて作品化したのが、あの『キメラブネ』なんです」(紗希さん)

立体作品『かんがえる こども』
プレオープンとして『キメラブネ』の前に展示されていた立体作品『かんがえる こども』は、現在アトリエに。

「大友氏館跡庭園も復元整備をしていますし、その文化的な盛り上がりに僕らも貢献できたらいいなって。初めて西洋音楽が流れたのも大分で、初めて西洋医学を用いた手術が行われたのもここ大分です。そんな南蛮文化発祥の地としての大分を、この作品を通して感じてもらえたらうれしいです」(健太朗さん)

教室の入口に掲げられた「展示室」の黒板プレート

大分県に生まれて大分県で暮らしてきたふたりだからこそわかる、まだまだ知られていないこの場所のいいところ。これからもザ・キャビンカンパニーは、作品を通して大分の隠れた魅力を教えてくれる、唯一無二のアーティストになってくれることでしょう。

様々な立体作品が展示されている教室内
ザ・キャビンカンパニーの阿部健太朗さんと吉岡紗希さん
Profile ザ・キャビンカンパニー

阿部健太朗(由布市生まれ)と吉岡紗希(大分市生まれ)による絵本作家・美術家ユニット。絵本を中心に、立体作品、デザイン、舞台美術など、多彩な作品を発表。デビュー作『だいおういかのいかたろう』で第20回日本絵本賞読者賞受賞。おもな著書に『しんごうきピコリ』『ボンボとヤージュ』『ねんねこ』など。各地での展覧会など、精力的に活動中。

credit text:川上靖代 photo:木寺紀雄

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