“旅の予定を狂わせる店”。
大分市〈カモシカ書店〉岩尾晋作さん
Uターンして書店を開店。
まちのカルチャー拠点に
大分駅から歩いて15分ほどの場所にあるガレリア竹町通商店街で〈カモシカ書店〉を営んでいる岩尾晋作さん。18歳で上京し、文化服装学院でデザインや洋服づくりを学んだあと、〈ジュンク堂書店〉の新宿店や映画会社に勤務しながら、多くの知識と人脈を身につけたと言います。そんな岩尾さんが地元大分に帰省して書店を開いたのは、2014年5月。岩尾さんが30歳の頃でした。
階段を上り、扉を開いた先には、想像以上に広く奥行きのある空間が広がります。奥にはソファー席があり、本を読みながらでも、カフェだけでも利用でき、コーヒーや10種類以上のスパイスをブレンドした特製チャイ、お酒も楽しむことができます。
カモシカ書店では、新刊と古書の両方を取り扱っており、文学書、思想書、画集、写真集、専門書、カルチャー関連や漫画など、あらゆるジャンルの本が揃っています。なかでも、大分県では珍しい初版本や限定版などの稀覯(きこう)本を扱っており、古書好きのあいだでは名の知れた存在なのです。
店主の岩尾さんは、大分県立美術館館長だった新見隆さんと展開してきた地域文化の本質に迫る学びの場「たびするシューレ」や、「ライブなアイデアで大分を旅する」移動型ラジオ放送局プロジェクト「大分で会いましょう。」といった、さまざまなイベント、プロジェクトに携わり、大分の活性化に一役買ってきたキーパーソンでもあります。
「昔から本が好きだった」という岩尾さんですが、Uターンして書店を出すに至ったのには、どのような思いがあったのでしょうか?
「観光まちづくりの先駆者として成功を収めた湯布院に憧れて、まちづくりというものをしてみたい! と思うようになっていたんですよね。
いつか独立しようと考えてはいましたが、帰省した当時、駅ビルや大分県立美術館ができることを知って、自分にも何か大分でできることがあるのでは? と、これから進化するであろうまちの可能性に賭けてみました。本当は東京で独立するか、相当迷いましたけどね(笑)」