何もない、でも何でもある。
それが大分らしさ。
俳優・財前直見
大分県出身の俳優・財前直見さんは、子育てをきっかけに2007年から故郷にUターン移住。今は仕事のたびに東京などと行き来しながら、普段は家族と一緒に大分での暮らしを満喫しています。
家族で管理する杵築(きつき)市の畑を毎週のように訪れ、旬の作物を味わったり、さまざまな加工品をつくったりして大分の魅力を体感しているそう。
前回に続き今回も、生まれ育った大分の魅力から、自然の恵みと共にある財前家ならではの暮らしのヒントまでたっぷりお届けします。
豊かな食材を使ったおいしい料理が人を笑顔にする
野山をひと通り散策して、袋いっぱいに収穫したしいたけ、摘んだばかりの菜の花とつくし、畑から採れたての野菜を抱えて戻ると、いよいよ財前さんのクッキングタイムが始まります。
菜の花と小松菜を軽く塩茹でしてざく切りにし、冷蔵庫からなにやら使い込んだボトルを取り出します。
「これは、自家製の“おいしい酢醤油”。カツオ節とお酢、醤油をブレンドした財前家秘伝の一本で、仕上げにひとたらしするだけでなんでもおいしくなっちゃう万能調味料です。摘みたての菜の花は風味が強くて、このほろ苦さと春の香りがたまりませんよね!」
続いて手にしたのは、財前家自慢の肉厚しいたけ。大分県民御用達、九州乳業の〈みどりバター〉をひとさじ贅沢に乗せて、ラップで包んで電子レンジで2分ほど加熱します。濃厚なバターの香りがキッチンに広がり、熱いうちに“おいしい酢醤油”をさっとかけて完成です。
「野菜も山菜も、とにかく素材がよいので調理はシンプルが一番。余計なことはしなくていいんです。採れたての旬のものをいただくのが何よりの贅沢。おいしくて、体にもよくて、お財布にもやさしくて、いいこと尽くしです(笑)」
都会では目にする機会がすっかり減ってしまったつくしも、春の山菜として昔から親しまれてきた食材です。
「つくしは独特の苦味があるので、脂でコーティングすると食べやすくなるんですよ」と、財前さん。
菜の花や小松菜を茹でた同じお鍋でつくしをさっとアク抜きして、バター、砂糖、醤油で手早く炒めれば、バター醤油のコクとつくしのほろ苦さが香る大人のひと皿に。シャキシャキっとしたつくしの食感が小気味よく、お酒もご飯もどんどん進むおいしさです。
テキパキと手際のよい財前さんの手にかかれば、先ほどまで野山に生えていた山菜も、あっという間に春を告げる贅沢な4品に早変わり。
実は、撮影スタッフのためにおにぎり弁当を準備してくれていた財前さん。「パパッとあるものでつくったのよ」と言いながら、目と舌にうれしいお弁当に喜びもひとしお。テレビ収録のときなどは、20人分ほどの賄いを用意することもあるというから頼もしい限りです。
「お米もお野菜も、とにかく食材は豊富にあるので、ついついつくりすぎちゃうんですよね(笑)。食材を無駄にしたくはないし、つくるのはまったく苦ではないんです。それに、人のおいしい顔っていいですよね。見ているだけで幸せになります」