帆足本家 富春館の外観
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著名建築家による建物から
歴史香る建造物まで!
心ときめく大分建築探訪 | Page 4

Posted 2021.08.10
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造り酒屋のお屋敷〈帆足本家 富春館〉は、
見どころだらけの大人のサロン空間

大分駅から車で20~30分ほどの中戸次(なかへつぎ)にある〈帆足本家 富春館〉は、江戸時代から昭和にかけて造り酒屋として栄えていた屋敷を改修しオープンさせた、衣食住を楽しむ複合スペース。

約2000坪もある広大な敷地の中には、作家の手仕事作品を展示するギャラリーやレストラン、和菓子屋さん、ショップなどが点在し、落ち着いた雰囲気の中で心豊かに過ごせる空間となっています。

上空から見た帆足本家 富春館
約2000坪の敷地に、ギャラリーやレストランなどが。(写真提供:帆足本家 富春館)

慶応元(1865)年築(!)の母屋は、江戸後期に南画家として活躍した田能村竹田をはじめとする多くの文人墨客たちが立ち寄り、過ごした場所。現在は当時の趣をそのままに〈ギャラリー富春館〉として、現代の作家たちによる作品などが展示販売されています。

和室のイベント展示スペース
服や器など、全国のすぐれたクリエイターの作品展示会や、イベントなどを随時開催しています。
白壁も美しい帆足本家 富春館の外観
敷地の約半分を占める酒造蔵は、1999年に大分市指定有形文化財として登録。建物の中には、当時の酒づくりの工程や、使用していた樽などの道具類が展示され、寝泊まりしながら酒づくりをしてきた蔵子部屋なども見ることができます。また、屋根や土壁など、建築の工程も展示されています(見学無料)。
外観を別角度から
外側から見た蔵も壮観!

ここでぜひ見てほしいポイントは、歴史と豊かさを感じさせる重厚なつくりの家屋や蔵の魅力を充分に生かしつつ、現代らしさを感じさせる空間になっているところ。古くから帆足家で使われていた家具を利用したショーケースがあったり、酒造の酒袋を革と組み合わせて座布団に仕立てたりと、ひとつひとつにちゃんとストーリーがあるんです。

レストラン桃花流水
食事とカフェが楽しめる〈レストラン桃花流水〉は、もとは蔵だった建物を、大正5年に洋館につくり変えたもの。ここで使われている椅子はもともと帆足家にあった1脚の椅子をもとに職人さんがつくったものだとか。明治から大正、昭和初期にかけて建てられた建物は、職人と機械が競争した時代。それゆえ、趣向を凝らした建具など、細部にわたりきめ細かく細工された職人の技なども楽しめます。
窓にはステンドグラス

総支配人の帆足めぐみさんは、そもそもギャラリーやカフェを開きたいと思っていたわけではなく、昔からあるここにあるものを生かしたくて、この富春館を始めたと語ります。

「その昔、ここは文人墨客たちが自由に詩画や茶を楽しむサロンのような場所だったと聞いて、それをもう一度現代に蘇らせて、いまの作家さんたちの手仕事を紹介したり、お茶やお菓子を楽しんでもらう場にできたらという思いで始めました」

和菓子とコーヒーのセット
桃花流水で楽しめる和菓子とコーヒーのセット(990円)。和菓子は同じ敷地内にある〈菓子処 一楽庵〉より。季節ごとに変わる和菓子は、良質な材料を使い、めぐみさんと職人さんが試作を重ねてレシピを開発した、やさしい味わい。ほかに、地物の「戸次ごぼう」を使った「元気が出る発酵ごぼう弁当」(2200円)も人気。
LIFE&DELI 富春館の入口
〈LIFE&DELI 富春館〉では、素材にこだわったエコロジーな食品や、古き良き時代の日本の食文化を見直した正直な調味料、戸次ごぼうを使った食品、帆足本家に伝わる調度品をパッケージにしたお菓子など、選りすぐりの食品や、雑貨なども販売しています。お土産に買いたくなるものがたくさん!
Information
帆足本家 富春館
address:大分県大分市中戸次4381
tel:097-597-0002
access:JR中判田駅から徒歩約30分、または車で約5分。またはJR大分駅から車で25~30分。
営業時間:11:00~17:00
定休日:月・火曜(祝日の場合は翌日)
web:帆足本家 富春館

大分市の建築探訪を終えて、どの建物にも一貫して感じたのは、すばらしい建築をただ保存管理するのではなく「いまの時代にあったかたちで生かしていこう」という心意気と建築家たちへのリスペクトです。

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Information

credit text:川上靖代 photo:木寺紀雄

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