“山が香る”地で始めた新しい暮らしと民泊。
〈山香文庫〉牧野史和さん&鯨井結理さん | Page 3
新しい計画も楽しみな、
山香文庫のこれから
山口県で生まれ育ち、東京に進学して身体表象を学んでいた牧野さんが杵築市にやってきたのは、「都会生活の息苦しさとスーパーで売られている製品としての野菜への違和感から、卒業後は農業に関わって、農業について発信する仕事がしたいと考えたところからでした」(牧野さん)
「私は私で、生まれ育った埼玉からいつか移住したいという夢を持っていて、国内をあちこち旅してまわっていたんです。牧野くんとは共通の知人がいて出身大学も一緒。お互いフィルムカメラが趣味で、心と身体の関係に興味を持っている。知人の知人というくらいのつながりだったんですが、大分を案内してもらおうと、ある日連絡をとったんです」(鯨井さん)
当時、地域おこし協力隊だった牧野さんによる、観光案内ならぬ移住のためのようなツアーが功を奏し、地元の人しか行けない場所や会えない人を訪ねた鯨井さんも、この土地の魅力に心をつかまれました。
現在は、山香文庫で週に数組のゲストを受け入れながら、国東市の茶園で有機栽培のお茶をつくり、中津市と別府市のスタジオでダンスを教えたり、ダンサーとしてイベントに出演もしている牧野さん。もともとヨガインストラクターをしていた鯨井さんは、遠隔で仕事を続けながら別府市でヨガクラスを受け持ち、週末は地元のパン屋さんで働いています。
「ここ数年は植物療法を学んでいて、資格も取得しました。イベントに出店してハーブティーをブレンドしたり、その人のための香りをつくったり。いずれは山香文庫での時間を家に連れて帰ってもらえるような、セルフケアのワークショップなどもできたらいいなと考えています」(鯨井さん)
「山香という文字を移動させたい」と語るのは牧野さん。「この場所に来てもらうだけじゃなくて、オリジナルのお茶をいろんな場所で販売したり、山香文庫という場所をまちに構えてみるのもおもしろそう。僕らが撮った写真や、ほうじ茶で染めた作品を展示する機会も増やしていきたいですね」(牧野さん)
江戸時代に城下町として栄えた杵築市。近隣の国東市や豊後高田市には1000年を超える歴史のある「修正鬼会(しゅじょうおにえ)」や「ケベス祭」などの珍しい祭りも残っています。日本最古の石造沈下橋とされる「龍頭橋(りゅうずばし)」、桜の名所をはじめ、豊かな自然に恵まれ観光も楽しめますが、名所を巡るだけでは物足りない、自然に近しく暮らす人の生活に触れたいという人に、山香文庫をおすすめします。
1989年山口県生まれ。茶園で紅茶の生産、販売に従事する。ダンサー、ダンスインストラクターとしても活動。
1987年埼玉県生まれ。植物療法士の資格を持ち、〈山香文庫〉ではハーブの調合なども。ヨガインストラクターとしての活動も継続中。
*価格はすべて税込です。
credit text:鳥澤光 photo:ただ(ゆかい)