縁側に置かれたたくさんの竹かごや竹ざる
連載|あの人に会いたい!

“山が香る”地で始めた新しい暮らしと民泊。
〈山香文庫〉牧野史和さん&鯨井結理さん | Page 3

Posted 2024.03.29
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新しい計画も楽しみな、
山香文庫のこれから

山口県で生まれ育ち、東京に進学して身体表象を学んでいた牧野さんが杵築市にやってきたのは、「都会生活の息苦しさとスーパーで売られている製品としての野菜への違和感から、卒業後は農業に関わって、農業について発信する仕事がしたいと考えたところからでした」(牧野さん)

竹ざるや竹かごがたくさん置かれた縁側
天気のいい日は何時間でも過ごせてしまうという縁側。庭先には季節ごとに鳥たちがやってきます。

「私は私で、生まれ育った埼玉からいつか移住したいという夢を持っていて、国内をあちこち旅してまわっていたんです。牧野くんとは共通の知人がいて出身大学も一緒。お互いフィルムカメラが趣味で、心と身体の関係に興味を持っている。知人の知人というくらいのつながりだったんですが、大分を案内してもらおうと、ある日連絡をとったんです」(鯨井さん)

当時、地域おこし協力隊だった牧野さんによる、観光案内ならぬ移住のためのようなツアーが功を奏し、地元の人しか行けない場所や会えない人を訪ねた鯨井さんも、この土地の魅力に心をつかまれました。

縁側に吊るされた干し柿
庭で採れた柿は縁側で干し柿に。

現在は、山香文庫で週に数組のゲストを受け入れながら、国東市の茶園で有機栽培のお茶をつくり、中津市と別府市のスタジオでダンスを教えたり、ダンサーとしてイベントに出演もしている牧野さん。もともとヨガインストラクターをしていた鯨井さんは、遠隔で仕事を続けながら別府市でヨガクラスを受け持ち、週末は地元のパン屋さんで働いています。

「ここ数年は植物療法を学んでいて、資格も取得しました。イベントに出店してハーブティーをブレンドしたり、その人のための香りをつくったり。いずれは山香文庫での時間を家に連れて帰ってもらえるような、セルフケアのワークショップなどもできたらいいなと考えています」(鯨井さん)

スプーンでハーブを調合中
ハーブティーを調合する鯨井さん。
リビングに並ぶ急須や湯のみ茶碗
リビングに並ぶお茶にまつわるアイテム。亀田大介さん、文さん夫妻など、地元の作家の器も並びます。

「山香という文字を移動させたい」と語るのは牧野さん。「この場所に来てもらうだけじゃなくて、オリジナルのお茶をいろんな場所で販売したり、山香文庫という場所をまちに構えてみるのもおもしろそう。僕らが撮った写真や、ほうじ茶で染めた作品を展示する機会も増やしていきたいですね」(牧野さん)

お茶染めの紙を何枚も重ねてステッチを施したコラージュ作品
お茶で染めた紙にステッチを施した牧野さんの作品。

江戸時代に城下町として栄えた杵築市。近隣の国東市や豊後高田市には1000年を超える歴史のある「修正鬼会(しゅじょうおにえ)」や「ケベス祭」などの珍しい祭りも残っています。日本最古の石造沈下橋とされる「龍頭橋(りゅうずばし)」、桜の名所をはじめ、豊かな自然に恵まれ観光も楽しめますが、名所を巡るだけでは物足りない、自然に近しく暮らす人の生活に触れたいという人に、山香文庫をおすすめします。

テーブルに向き合って座り本について話す鯨井さんと牧野さん
牧野史和さんと鯨井結理さん
Profile 牧野史和

1989年山口県生まれ。茶園で紅茶の生産、販売に従事する。ダンサー、ダンスインストラクターとしても活動。

Profile 鯨井結理

1987年埼玉県生まれ。植物療法士の資格を持ち、〈山香文庫〉ではハーブの調合なども。ヨガインストラクターとしての活動も継続中。

Information
山香文庫
address:大分県杵築市山香町大字広瀬899
access:JR中山香駅から車で約10分、JR杵築駅から車で約10分。
料金:1泊朝食付き7150円。夕食は1名1980円。11~3月の厳冬期は別途暖房費として1泊ごとに1組800円。予約や問い合わせはInstagram DMで。
Instagram:@yamagabunko

*価格はすべて税込です。

credit text:鳥澤光 photo:ただ(ゆかい)

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